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2006年1月15日 (日)

「SAYURI」、アメリカの興行で苦戦

memoirsofageishaアメリカのビジネスで「SAYURI」こと「MEMOIRS OF A GEISHA」が苦戦しています。公開5週で約40M(日本円で約48億円程)で、このままだとどうやら最終的には$50M(約60億円)程度にとどまりそう。制作費が$85M(大雑把に100億円)と見られていますので、海外での興行収入が同程度かプラスだったとしても、制作費の回収は厳しい状況ではないでしょうか(北米で制作費と同等の興行収入があれば、海外収入、DVD等の収入を見込んでほぼイーブンと言われる)。

アメリカでは当初より興行面での危惧がされていました。原作は超ベストセラーでしたが、異国の特殊な文化、社会を描いた文芸作品で、アクション、セックス等の刺激的要素は少なく、また登場人物がほとんど日本人であって、これを演じる事ができる“大スター(知名度ではなく、”客が呼べる“)がいないこと等がその理由です。一度はスティーブン・スピルバーグ*が監督に決定、無名の新人リカ・オカモトをさゆり役に、マギー・チャンを豆葉役に選んだかかわらず結局撮影開始に至らなかったのは、こうした問題が解決されなかったからと思われます。こうした中、一時はスパイク・ジョーンズが監督(していたら、元妻ソフィア・コッポラの「ロストイントランスレーション」みたいになっていたかな?)するという話が出ていましたが、これは立ち消え。

ところが2003年にアカデミー賞作品賞(&監督賞も)に輝いた「シカゴ」のロブ・マーシャルが次回作として興味を示した事から、プロジェクトは再開しました。彼が監督し05年末に公開すれば、06年のアカデミー賞が期待できるからです。キャスティングも再度やり直しになり、現時点で国際的に最も知名度の高いアジア女優・チャン・ツィイーと、かなり知られてきた男優俳優ケン・ワタナベ(知名度ではジャッキー・チェン、チョー・ヨンファ、ジェット・リーの次くらいか)を揃える事が出来ましたが、アメリカでの宣伝は“デビュー作「シカゴ」でアカデミー賞に輝いた監督のロブ・マーシャルの第二回監督作品”に絞られた感がありました。

アカデミー賞を狙う作品の公開パターンとは、1)対象年の年末に大都市で限定公開**、2)評論家の絶賛と口コミの好評を受けて徐々に拡大公開、3)年末から新年にかけての各種賞レースで実績を重ね、ロングラン(公開が早かった場合はこの時期再公開したりする)、4)スバ抜けて知名度の高いアカデミー賞で賞を取り、これを興行面で生かす、となります。ロブ・マーシャル監督の前作「シカゴ」はまさにそれで、2002年の12月に77館で公開され(公開最初の週は13位)、評論家の絶賛と口コミを武器に、2003年1月後半に600館に拡大公開、そして3月にアカデミー賞作品賞を受賞して2700館まで拡大公開、北米興行成績$170億を稼ぐヒットとなりました。

「SAYURI」もまさにこの公開パターンで、12月上旬にNY, LA, SFの3都市で先行公開、12月23日からは1500館まで公開館を拡大してきました。ここまではまさに狙い通りだったのですが、残念ながら非常に重要な“批評家からの絶賛”と“良い口コミ”がついてこずに公開前の熱気が失われてしまいました。Yahoo Movies評価での評論家B-、一般B評価が示すように「GoodだけれどもGreatではない」というのが大体の見方のようです。「Great」の評価は「ブロークバック・マウンテン」「グッドナイト、アンド グッドラック」、そして「ミュンヘン」「ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス」等に与えられています(この4作品は全て限定公開からスタート)。すなわち本来作品が持っていた文芸作品の弱さ、スター不在という興行面の弱さをアカデミー賞(に代表される作品の質的高さをキープする事)でカバーするという戦略が、崩れてしまったということではないでしょうか。

もちろん、この所不調とは言えメジャーの意地をかけてソニーピクチャーもPushするでしょうから、アカデミー賞候補にひっかかる可能性はまだまだ残されていますが、現状では厳しくなったというのが実情でしょう。日本人としては、多少怪しい所はあっても日本を舞台にした映画がヒットしてくれたら嬉しかったのですが。

* 日本ではまるでスティーブンスピルバーグ作品の如くの扱いと思われますが、スピルバーグは“昔、監督する気があったプロデューサー”に過ぎず、アメリカで宣伝に使われることはありませんでした。あくまでもロブ・マーシャル作品。
* * 3000館でスタートする作品は当然「全米NO1」映画として国内外で宣伝に使えますが、作品に力がなければ翌週半分以下、その翌週さらに半分以下で一瞬にして消えてしまう場合多し。限定公開をとる作品は作品に自信があるか、まったく興行価値がないかのどちらか。

過去記事:  「SAYURI」Memoirs Of A Geisha 2005年8月12日

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コメント

コメントありがとうございました。

>「絶賛」という味方を失った場合、本来の作品の持つ文芸作品の弱さ、スター不在が興行にたたっているというのが現状ではないでしょうか。

この文章の部分に大変興味があります。
NHKでもハリウッド映画のコンテンツの枯渇のような番組を放送していましたが、ここ数年、今まで経験してきた映画とは違うものを見せられている気持ちにもなります。

投稿: yanks | 2006年1月15日 (日) 21時44分

★yanksさん、コメントありがとうございました。が、すみません、丁度入れ違いでこの部分をより判り易く書き換えてしまいました・・・

この「コンテンツの枯渇」については、私は基本的には「枯渇しているのではなく、制作費の”敷居”が高くなってしまって、ギャンブルをしなくなった」ではないかと思っています。ある意味、ヴァラエティは広がっているのかも知れません(ただ、日本公開を基準にするとそれは見えにくい

投稿: rambler | 2006年1月15日 (日) 23時52分

こんにちわ。
サユリ、苦戦なんですねー。やっぱり渡辺謙さんじゃまだまだってところなんですね。しかし原作は本当にメガヒットらしいだけに映画の不振は残念です。
ところで、最初スピルバーグにサユリ役に選ばれてたリカ・オカモトさんって??日本では聞かない名前ですよねー。

投稿: SHOKO | 2006年1月22日 (日) 09時58分

ごめんなさい。
トラバしたら二重投稿に‥削除してくだされ。
それから、記事で紹介させてもらいましたァ♪
ペコm(_ _;m)三(m;_ _)mペコ

投稿: fuzika | 2006年1月22日 (日) 21時42分

★SHOKOさん、コメントありがとうございます。謙さん、アメリカのAMEXの広告にバンバン出ていて(他はデニーロやケイト・ウィンスレット)知名度Up中。ただ”客が呼べる”には程遠いようです。

リカ・オカモトさん、ニューヨーク在住のダンサーだったとの事ですが、確かにその後聞かないですよね。ちょっと追っかけてみます~

★fuzikaさん、コメント&TB,どうもありがとうございました。非常に興味深いブログで堪能させて頂きました。またたまに遊びにいらしてくださいませ(二重分は消してあります)。

投稿: rambler | 2006年1月24日 (火) 11時38分

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