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2006年3月17日 (金)

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」 レビュー

historyof昨年アメリカで公開された映画の中で、「ブロークバック・マウンテン」「カポーティ」等と並び最も評価の高かった(いくつかの雑誌等でBest 1になっている)デビット・クローネンバーグ監督作品(ややこしいのはクローネンバーグ作品に「クラッシュ」という作品があることですね)。ただ流石はクローネンバーグ、暴力描写のキツサ、Sex描写が生々しすぎるなど反発も強く、アカデミー賞作品賞ノミネートは逃しましたが、ノミネート作に比べても遜色のない作品です(映画館で見逃しDVD鑑賞)。

インディアナの片隅の田舎町で家族と共に平凡ながらも幸せな暮らしをおくるトム(ヴィゴ・モーテンセン)。自ら経営するダイナーにある日、強盗が押し入りますが、鮮やかに撃退し、一躍ヒーローに。しかしこの事件を聞いて彼の周りに不気味な黒服の、一目見てよろしくない連中が現れます。トムの過去につきまとう黒い影におののく妻、とまどう息子(自分の高校生活にも暗い影)、何もわからない無垢な娘。

もちろん昔は流れ者、実は正当な王室の継承者をやっていたヴィゴのことですから、只者な訳はありません(ただし王様にはならない)。暗い過去を背負いながら、家族を守るために男は再び銃を取るという構造は西部劇(「許されざる者」風味)、もしくは任侠物。しかしそこはクローネンバーグ、殆どホラーに近い殺戮シーン(DVDの削除シーンに「スキャナーズ」を思わせるシーンあり。残して欲しかった)、生々しいSexシーン(2回出てきますが、そこで夫婦間の関係の変化を表現)を盛り込んで、シンプルかつ奥行きの深い“暴力についての考察”映画となっています。

ヴィゴ・モーテンセンが過去のある男を好演していますが、マリア・ベロがアカデミー賞の助演女優賞候補に入れて欲しかった絶品の妻役。不気味な男を演じさせたらこの上なしのエド・ハリス、知的で落ち着いた物腰でありながら“暴力の匂い”を漂わす男にウィリアム・ハート(たった10数分の出番のこの役でアカデミー賞の助演男優賞にノミネート)と見事なアンサンブル。

面白いのは音楽が「ロード・オブ・ザ・リング(ス)」三部作のハワード・ショアなのでそこはかとなく感じる“指輪残像“。ただ「ロード」では寸止めだった暴力描写がストレートなのでアラゴルン・ファンはお気をつけ下さい。

関連過去記事:
その後の指輪物語・ヴィゴ・モーテンセン 2005年9月24日
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コメント

こんにちは!TBありがとうございました。

>知的で落ち着いた物腰でありながら“暴力の匂い”を漂わす男にウィリアム・ハート(たった10数分の出番のこの役でアカデミー賞の助演男優賞にノミネート)

=確かに登場時間はわずかでしたのに、ノミネートされてしまう存在感あるウィリアム・ハート。
さすがでしたね。
静かな映画でした。でも、中身はかなり深く表には出さない汚さが結構心に残っています。

投稿: charlotte | 2006年3月20日 (月) 11時51分

★charlotteさん、コメントありがとうございます。

本当はかなり暴力的なシーンも多い映画なのですが、それが目立たず”静かな映画”に仕上げたクローネンバーグ。映画作家としての進化だと思います。その象徴がウィリアム・ハートの知的暴力演技だったのでしょうね(食われてエド・ハリスがノミネートされなかったのが、残念ですが)。

投稿: rambler | 2006年3月20日 (月) 13時39分

TBありがとうございました。
アカデミー賞はやっぱりな結果でしたが、この作品の演技陣は皆好演でしたね。
個人的にはウィリアム・ハートではなくて、久々に怪しさ全開のエド・ハリスをノミネートして欲しかった。
マリア・ベロは私の中ではERの女医さんなんですけど、何時のまにか深みのある演技派になってましたね。

投稿: ノラネコ | 2006年3月20日 (月) 23時33分

★ノラネコさん、コメントありがとうございます。

エド・ハリス、アレくらいは当然と思われてのノミネート無しだったのではないでしょうか。マリア・ベロ、私には「コヨーテ・アグリー」のボスなんですが(笑)、良い感じに枯れてきましたね。出演作が目白押しなんで楽しみです。

投稿: rambler | 2006年3月22日 (水) 14時16分

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