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2006年10月17日 (火)

やられました、「ディパーテッド」

Departed1_220_2 お見事。優れた犯罪アクション映画であり、現時点で本年度の最高の作品。アメリカでの批評を読むとスコセッシ作品としては“「グッドフェローズ」以来の優れた作品”という言い方が出ていますが、個人的には「グッドフェローズ」よりも上。「ギャングス・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」でアカデミー賞にもう一歩だったスコセッシ・ディカプリオコンビに悲願の栄冠をもたらすかも知れません★。

 原作にあたる香港映画「インファナル・アフェア」の舞台である香港闇社会を、アイリッシュ・マフィアの跋扈するサウス・ボストンに移し変え★★、警官に潜入した犯罪組織の男と犯罪組織に潜入した警官の二人の男。常に死と背中合わせの緊張感の中で、生き残る唯一の方法は敵対する組織内“潜入者”を見つけ出し抹殺すること。お互いに顔も知らない二人が、自分の影に怯えつつ、生死をかけて激突します。

 最近のリメークはやりのアメリカ映画をお嘆きの方も多いと思いますが、逆にリメークの強みもあります。それはきちんとした設計図(脚本)が既に出来ている為、その上に安心して力のあるスタッフ&役者達を乗せて存分に個性を引き出すことに集中出来ること。

 演技では、繊細で脆いレオナルド・ディカプリオVS自信に満ちたマット・ディーモンの若手の駆け引きも素晴らしいのですが、やはり今回はジャック・ニコルソン。威厳と愛嬌を持ちながら、ちょっと気に入らなければ即相手の頭を打ち抜くようなぴりぴりとした狂気を撒き散らして、二人の運命を握る組織のボス・フランク・コステロを演じています。スコセッシと言えば、デニーロとのコンビが名高いのですが、今までニコルソンと組んだ事が無かったのが不思議。警察側幹部マーティン・シーン、マイク・ウォールバーグ、そしてアレック・ボールドウィンの3人も素晴らしいのですが、一人で対抗してしまうその存在感は圧巻です(犯罪組織幹部レイ・ウィンストンにもご注目を)。そしてこの男臭い世界の中で、注目は対決する二人の男から愛される運命の女性マドリンを演じるヴェラ・ファーミガ。精神科医という知的な役柄を演じながら、二人の男を惹きつけて行く色気は只者ではありません。これまでは独立系の映画で活躍してきた人ですが、今後化ける可能性あり。

 スタッフに関しては、撮影(マイケル・ボールドハウス)も編集(名コンビ・セルマ・シューンメイカー)も巧みですが、個人的に特筆したいのは音楽。ハワード・ショアの音楽+相変わらずのスコセッシ選曲の上手さ。“戦争、レイプ、殺人。嵐が吹き荒れている。もし隠れる場所を見つける事が出来なければ、俺は吹き消されてしまう。誰か俺に隠れる場所をくれ”と歌うザ・ローリング・ストーンズの名曲“ギミーシェルター”、そして“私は、快適な麻痺に落ちてゆく”と歌うピンク・フロイド“コンフォタブリー・ナム”(映画ではアイランド系・バン・モリソンのバージョン)を、そして地元ボストンのバンド・ドロップキック・マーフィのアイリッシュ的でかつヘビーな“I'm Shipping Up To Boston”の予告編で使われている3曲が、分散した形で効果的に使われています。

 こうした役者&スタッフを存分に操って、スコッセッシが本領を発揮したずしんとヘヴィなドラマ&アクション。1年半前のアカデミー賞の復讐を果たすときはやってきました。日本公開は来年1月★★★との事ですが是非お楽しみに(注:かなり血生臭いので、ご注意を)。

★「ミリオンダラー・ベイビー」で「アビエイター」を逆転、墜落させた最強のライバル・イーストウッドの「父親たちの星条旗」が今週末に登場しますが。スコッセッシVSイーストウッドの重量級再戦も見もの。
★★その雰囲気はライバル・イーストウッドの「ミスティック・リバー」にそっくり。あの映画も同じ場所で育った三人の男が、犯罪者、犯罪犠牲者、そして警官になる映画でした。ボストンはアイルランド系住民がアメリカで最も多く、U2のコンサートが最も盛り上がる場所。
★★★ 日本公式サイト

過去記事:ザ・ディパーティッド(インターナルインファナル・アフェア)/ The Departed プレビュー別ポスターあり

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ディパーティッド/ The Departed
分野: アクション・アドベンチャー、ドラマ、リメーク
米国公開日: 2006年10月6日(拡大公開)
米国公式サイト:
  Apple予告編: http://www.apple.com/trailers/wb/thedeparted/trailer1a/ 
  Yahoo予告編: http://movies.yahoo.com/feature/thedeparted.html;_ylt=AsVlkhZq47V92IcO_1HqI6NfVXcA
米国配給会社: Warner Bros. Pictures Distribution
日本公開日:2007年正月第二弾
日本公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/thedeparted/
主演:Leonardo DiCaprio, Matt Damon, Mark Wahlberg, Jack Nicholson, Vera Farmiga、Martin Sheen、Alec Baldwin
監督:Martin Scorsese
製作:Roy Lee, Doug Davison, Gianni Nunnari
上映時間:2時間30分
レイティング:R

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コメント

「ディパーテッド」予告編使用曲でコメントしましたが
あの3曲が劇中でも使われいるのですか、最近では珍しいですね、
これから発売されるサントラには1曲ないようですが。
こちらでレオナルド・ディカプリオ以外でよく取り上げられるのは
やはりジャック・ニコルソンです。もっとも内容は
ギャラ上乗せを要求やレッドソックスの帽子を拒否して
ヤンキースの帽子を被り続けたとかですが(笑)。
日本公開は来年ですがその前に映画祭での上映があるので
チケットを購入して楽しみに待っています。

投稿: JCR | 2006年10月23日 (月) 21時17分

★JCRさん、コメント&役に立つ情報ありがとうございます。「コンフォタブリー・ナム」の件ではお世話になりました(良く聞くと「Wall Concert」なのでバックでロジャー・ウォータースの声もしていました)。

そうですか、レッドソックスの帽子、拒否ですか。サウス・ボストンならその理由だけで銃撃されてもおかしくない(笑)。しかしまたもやジャック快(怪)演で、美味しいところをさらっています。是非お楽しみに。

投稿: rambler | 2006年10月26日 (木) 10時59分

こんにちは。
この作品、実は観てからだいぶ経ってからアップしました。
というのも、オモシロすぎて書きようがない。
とにかくどっぷりハマりました。
今回、rambler さんのレビューを拝見して、
その明快な分析と言葉選びの的確さに脱帽しました。
なかでも

>それはきちんとした設計図(脚本)が既に出来ている為、その上に安心して力のあるスタッフ&役者達を乗せて存分に個性を引き出すことに集中出来ること。

ここに、この映画のオモシロさが集約されている気がしました。
これからもよろしくお願いします。

投稿: | 2006年11月27日 (月) 09時09分

TBサンクスです。
確かにニコルソンの映画でしたね。
レオ&スコッセシ初オスカーなりますか?
強敵は、イーストウッドではなく、『パフューム』のトム・ティクヴァだと思います!
米国ではまだ未公開だから、ノミネート対象になるかどうかわかりませんが、とにかくすばらしい映画です!!

投稿: naonao319 | 2006年11月27日 (月) 13時36分

★えいさん、いつもありがとうございます。

 映画館ではストーリーを追いかける&いつ弾が飛んでくるのかと身構えるのにエネルギーを消耗したので、DVDが出たら、役者中心視点でまた見返したいと思っています。とにかくパワフルな作品でした。

 スコセッシの新作はストーンズのドキュメンタリー。収録が行われたニューヨークのコンサートを狙ったのですが、チケット入手不可能でした・・・

★naonao319さん、コメントありがとうございました。
 どうもアメリカでのアカデミー賞予測を見ていると、ワーナーはディカプリオを「ブラッド・ダイアモンド」の方で押していく方針のようですが、こちらは強敵多数。スコセッシの方は現時点で大本命のようです。

「パフューム」はアメリカでも年末公開なので、アカデミー賞の対象になります。注意しておきますね。

 

投稿: rambler | 2006年11月28日 (火) 21時31分

こんにちは、
面白かったですね。
キャストとストーリー共によかったです。
レオナルド・ディカプリオ、マット・ディーモン、ジャック・ニコルソンは、もちろんこの作品の目玉キャストで、彼らの演技に大満足なんですが、マイク・ウォールバーグも光っていました。
彼の機関銃の様な罵詈雑言の嵐と、自信に満ちた前半の表情に対して、最後のうらぶれた姿、いい味出していました。
オリジナルの評判がとてもいいので、今度観てみたいと思っています。

投稿: かめ | 2006年12月 9日 (土) 04時20分

★かめさん、コメントありがとうございました。

 確かにマイク・ウォールバーグ、美味しい役柄でアカデミー賞助演男優賞の隠れ候補の一人。彼が主演のサイド・ストーリーを見てみたいくらいの存在感でした。

 私もオリジナル未見ですので、近日中に見るつもりです。

投稿: rambler | 2006年12月13日 (水) 20時07分

とても良い出来だと思うんですが、スコセッシ作品ならどっちかと言うと「グッドフェローズ」や「アビエイター」でオスカー貰った方が納得出来た気がします。
どうしても元ネタと比べてしまって、薄味に感じてしまうのです。
なまじ脚本の出来が良いだけに、スコセッシの強烈な作家性は希薄だった気がするのですが。
どちらかと言うと脚色賞をあげたい作品です。

投稿: ノラネコ | 2007年2月11日 (日) 01時20分

★ノラネコさん、コメントありがとうございます。

 アメリカでの本作の評価のされかたを見ると、(私のように元作品を見ていない人が多く)、本作はスコセッシ・ワールドへ回帰していると見られているようで、「グッドフェローズ」以来の傑作という言い方が結構ありました。このあたりに日米の温度差が出ているような気がします。

 確か「グッドフェローズ」はケビン・コスナー(「ダンシズ・ウィズ・ウルヴス(日本タイトルはなんでしたっけ?)」)に、「アビエイター」はイーストウッド(「ミリオンダラー・ベイビー」)に敗れたと記憶しますが、ひょっとして俳優&監督に弱い?だとすると今回「硫黄島」にイーストウッドは出ていないので勝っちゃうかも。

投稿: rambler | 2007年2月20日 (火) 01時05分

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受信: 2006年11月27日 (月) 09時13分

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私もお気に入りの香港映画(インファナル・アフェア)のリメイクということで、 今回はちょっと趣向を凝らして?! オリジナルVSリメイクの形式でレビュー書きます。 左がオリジナルで右がリメイク 先ず、 演出 アンドリュー・ラウ=マーティン・スコッセッシ 引き分けかな? スコッセッシ今のところ強敵いないか..... [続きを読む]

受信: 2006年11月27日 (月) 13時32分

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評価:75点 [続きを読む]

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