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2006年11月14日 (火)

「イカとクジラ」 レビュー

Squid_and_the_whale220 地味ながらきらりと光る小品。監督・脚本のノア・ボーンバッハ自身の経験に基づいた物語をシリアス、ユーモラスを混ぜ合わせた語り口で描いたこの映画は多くの雑誌・新聞で2005年のTop10に選出され、アカデミー賞の脚本賞にもノミネートされました。ちなみに御大スティーブン・キングの2005年のベスト1作品。ご存知作家同士夫婦で、売れない頃には高校教師をしながら家族を養っていた彼には「とても他人事とは思えなかった」そうです(笑)。

 1986年のブルックリン・パークスローブあたりの住宅街に住む家族。かつてはちょっと脚光を浴びたけれど今は“作家の壁(ライターズ・ブロック)”にぶつかっちゃった小説家/大学講師の父(ジェフ・ダニエルズ)と最近脚光を浴びつつある同じく作家の母(ローラ・リニー)。この二人が突然離婚を宣言した事で戸惑う10代の兄弟・ウォルトとフランク。双方の親の家を交代で往復する日々の中で、壊れていく家族の絆が、性的に目覚めつつある兄弟に微妙な影を落としていきます。

 このパークスローブというのは、マンハッタンから地下鉄に乗ってほんの30分程度でたどり着ける場所。マンハッタンの土地の高さを嫌ってこのあたりに居を構える知的層も多く(元ヒッピー等もこのあたりを好んだ)、アートな雰囲気を漂わせた街。映画を見て思うのは余りに今と風景が変わっていないこと(昨年撮ったのですからあたりまえですが)。この落ち着いた住宅街を背景に物語りは展開していきます。ちなみに「イカとクジラ」という風変わりなタイトルもあるニューヨークの名所にちなんでいます(私も最初にこの「イカとクジラ」を見たときはびっくりしました)。

 おかしいのはジェフ・ダニエルズの演じるだめ親父ぶり。作家としてのプライドばかり高いのに、若い女の子(アナ・パキン★)にふらふらしてみたり(この二人、「グース(Fly Away Home)」で父娘だったんじゃ・・・)。「スピード」のキアヌ・リーブスの相棒、「ジム・キャリーはMr.ダマー」の相棒(本当は主役なのに・・・)、昨年の「グッドナイト&グッドラック」と器用さが買われて地味な脇役をしていますが、舞台で鍛えた実力派。いい味、出してます。ローラ・リニーはいつもこれくらいなのは当たり前なので、まあ平均点(ごめんなさい。結構ファンです)。

 ネタばれになってしまうので書きませんが、作品中重要な役割を果たすのが、某英国プログレ重鎮バンドの超ベストセラーのアルバムからの一曲。このアルバム全体が“孤独感”、他者との“違和感”、“断絶“、”焦燥”そしてそれを象徴する“壁”についての作品である事を考えると鮮やかな選曲です。

 ドラマチックな事が起きて家族の絆を再発見し「泣けました!」「感動しますた!」というタイプの映画ではありませんので、力を入れて見に行くと完全に肩透かしですが、上記のように場所の空気、時代の空気を再現し、細部まで考えられて作られた落ち着いた味わいのある作品。是非お正月の映画館で(日本はお正月:公式サイト)、ぽつんと一人でお楽しみ下さい。

★アナ・パキン
1982年生まれなので今だ24歳。11歳で出演した「ザ・ピアノ」でアカデミー賞の助演女優賞を獲得。「あの頃、ペニーレインと」等もありますが、日本では「X-MEN」のローグで有名。地味になった、劣化した等との悪口もありますが、名門コロムビア大学に通いながら、実はこの映画のようなアート系での脇役、TVへの出演、ロンドン/ニューヨークの舞台に立つなど着々と“女優”としての地固めをしつつあります(子役出身者としてはテイタム・オニール、ドリュー・バリモアではなく、ジョディ・フォスターの道を目指しているかと)。

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