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2007年1月21日 (日)

ゴッド・セイブ・ザ・「クイーン」

Queen_220 今年のアカデミー賞の有力候補と言われる作品群の中で、いまいち日本にはその凄さが伝わりにくいのがこの「クイーン」。タイトル通り“ザ・クイーン”エリザベス二世を演じるヘレン・ミレンが、アカデミー賞の前哨戦というべき賞のほとんどをかっさらっている事で注目されていますが、どうしてどうして作品そのものが、素晴らしい出来栄えです。

 丁度10年前の1997年5月のトニー・ブレア・イギリス首相就任。そして同年8月末のダイアナ元皇太子妃の事故死。既に離婚により皇籍を離脱して民間人になっていたダイアナの死にまつわる狂騒から距離を置き別荘で時間を過ごす女王一家。しかし死して悲劇のヒロインとなったダイアナ元皇太子妃の人気は怒涛の如く、悲しみはやがて姿を現さない王室、そして女王に対しての怒りに転じていきます。バッキンガム宮殿すら飲み込もうとしていた危機の中で、ブレア首相は、チャールズ皇太子は、そして“ザ・クイーン”は如何に対処したのか。

 日本でも「明治天皇と日露大戦争」の昔から「ラスト・サムライ」に至るまで明治天皇を描く作品は存在しており、ソクーロフの「太陽」が公開されて昭和天皇を描く作品も登場しましたが、この映画はなんと言っても現役のエリザベス女王とその家族、現役首相ブレアの内面のドラマを、ドキュメンタリーの手法(当時のニュース映像が、効果的に挟み込まれる)と“創作”を交差させて描くという大胆極まりない作品。

 一歩間違えると“キワモノ”になってしまうこの作品を一級品のドラマにしているのは、やはり監督スティーブン・フリアーズの手腕と主演ヘレン・ミレンの力。歴史の重みと感じさせるバッキンガム宮殿内や別荘での王室内部家庭内ドラマ描写とブレア首相とメディアの喧騒に代表される外部世界描写の対比の鮮やかな演出。そして無力なチャールズ皇太子、怒りっぽく保守的な夫フィリップ・エジンバラ公、更に保守的な自分の母・エリザベス皇太后、軽さは否めないも流れを見る目に聡いブレア首相(マイケル・シーン好演)、そして王室から追放され過去の存在となったはずが、死して大きく立ちはだかるダイアナ元皇太子妃(本人の映像が繰り返し登場)といった全ての登場人物の中心であるクイーン・エリザベス=ヘレン・ミレンの演技。この演出と演技の組み合わせが、この作品を単に王室内幕物ドラマに留めず、時代の流れとそれに対処する人々の喜悲劇として一級の娯楽作品としています。

 昨年はフィリップ・シーモア・ホフマンの「カポーティ」での演技を、“神領域”と書きましたが、今年の“神”はこのヘレン・ミレン。普段はただの神経質そうなおばあちゃんでしかない彼女が、ひとたび決意を固めると共に、威厳と慈愛に満ちた“女王様”として降臨する様は圧巻。これはドラマで本当の女王陛下ではないと分っていても思わず敬意を表したくなるそのオーラ。ゴッド・セイブ・ザ・クイーン。

 さてアカデミー賞ではどうなりますでしょうか。ノミネートの発表は1月23日。

★賞レースの最新の結果はこちら:アカデミー賞総合案内ページ

日本公開2007年4月・日本公式サイト:http://queen-movie.jp/
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コメント

はじめまして。 ヘレンのオスカーは、もう磐石ではないですかねぇ。

ただのおばあちゃんの姿と女王をさりげなく演じてましたね。 ちと、ブレアが恰好良すぎないかと思いましたが、笑

投稿: パピ | 2007年2月 4日 (日) 09時34分

★パピさん、コメントどうもありがとうございました。

 ヘレン・ミレンのオスカー、決定的と思いますが昨年の「ブロークバックマウンテン」のまさかの作品賞敗退がありますので気をつけて見守りたいと思います。

 男優賞のフォレスト・ウィテカーが「ラストキング・オブ・スコットランド」で取ると、今年はキング&クイーン、またも実在の人物(アミン大統領とエリザベスII)ということになりますね。

 ブレア首相、この映画も実物も軽さが身上?

投稿: rambler | 2007年2月 7日 (水) 12時15分

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» Her Majesty [Butterfly Stroke]
You may not be allowed to vote. ここ数年、アカデミー賞の主演男優部門はそっくりさん受賞が続いてまして。 なんと今年は女優部門もそっくりさん?という冷ややかな目とは無縁に「The Queen」でヘレン・ミレンが演じた、庶民と変わらぬ一家庭人でありながらも、静か....... [続きを読む]

受信: 2007年2月 3日 (土) 13時45分

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