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2007年2月 2日 (金)

「硫黄島からの手紙」in USA

Iwojima360 やっと見てきましてこの作品、やはり噂にたがわぬ素晴らしい作品でした。と同時にこうした“骨太”な映画を監督する事が出来る監督が日本にいなかった(探したが結局イーストウッドが撮ることになった)事が惜しまれます。黒澤明監督は無理でもせめて岡本喜八監督がご健在ならばなあというのは個人的な願望。このあたりをネタに色々書こうと思ったのですが、日本ではとっくに公開済みですので、ここではアメリカでの状況につきましてレポート致します。久々の長文ですので、途中からは続きに。

アカデミー賞の作品賞にノミネートされた事を受け「硫黄島からの手紙」がアメリカで拡大公開されつつあります。元々2月9日公開予定だったものを、2006年度アカデミー賞の候補対象とするため、12月20日からNY,LA,SFの5館で先行公開し、大絶賛を持って迎え入れられました。日本とは違って、未だイラクで、アフガニスタンで“戦闘行為”を行っているこの国で、“敵”にも顔があり、自分たちと同じように“人生”があるユニークは視点がこの映画に対する高い評価を支えています。

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 その後1月19日から35館に拡大、ゴールデングローブ賞の最優秀外国語作品賞受賞を受けて先週末に360館公開に拡大し、アカデミー賞作品賞候補となってさらに415館に拡大、今週末は$1.9Mを稼ぎ出しました(累計$4.8M)。アカデミー賞の発表までは堅調に推移すると見られますので、過去における日本語映画の北米興行成績記録★である「Shall We Dance?」の$9.7Mを凌ぐこととなり、イタリア語作品でありながら、やはり作品賞にノミネートされた「ライフ・イズ・ビューティフル」の$57M、また「星条旗」の$33Mにどこまで近づく事が出来る事が出来るかが焦点かと思われます(2月2日には720館にまで拡大・週末を含め$8Mまで行きそう)。

 日本では他の作品賞候補「ディパーテッド」等との比較で「不入り」との報道がされているそうですが、ディカプリオ・ディーモン・ニコルソンが顔を揃え、スコセッシが監督する“アクション大作”とイーストウッド監督の看板はあっても“戦争映画”(映画館に一番こない高年齢の男性が観客の中心)、“外国語作品(字幕の映画を見に行くのは都市インテリ層)”、“スター不在(渡辺謙は知名度はそれなりにあるが、客を呼べるかどうかは全く別の話)”の三重苦のこの作品を単に興行面で比較する事はかなり無理があります。ベストセラーの原作というセールスポイントを持っていた同じイーストウッド作品「父親たちの星条旗」ですら、評価的には高かったものの興行的に惨敗した状況下で、こうした“売りにくい”作品はこうした“賞”との連動でビジネスを展開して行くしか戦略は無く、その意味では現時点での展開は予定通りと言えるかと思います。

 私の住んでいる東部の都市では2館で公開。土曜の午後に行きましたが200人程度のキャパシティの劇場で、観客は40人位だったでしょうか。こうした“アート系”としては結構入っている方でしたが、大多数が白人年配者の夫婦連れで日本人は私を含め3人。都市部と違い保守風土の田舎で白人年配に囲まれてこの“日本”映画を見るのは不思議な体験でした。

 鑑賞中は緊張感の連続でOh!とか、Uhh!といった小さな声がこぼれていました。特に反応が大きかったのは前半の“馬のシーン”、そして悲惨な自決シーン。アメリカ人がぐっと乗り出して“入り込んで”来たのは、オクラホマ出身兵とのバロン西の会話のシーン。そして捕虜が無残に・・・のシーンでは、「信じられない」というように館内が静まり返っていました。終了時は拍手こそ起きなかったもの館内の声を聞いていると、「ワンダフル」等との声が聞こえ、ポジティブな空気。ところが、その空気を裂くように、ちょっと離れた所で上品な白人女性に対し夫と思われる70以上の白人男性老人が「They started it!(日本人が始めた戦争だぞ!)」の一言。そんな映画じゃなかっただろう、と思って思わず顔を見てしまいましたが、田舎の持つ保守的な空気・今尚残るパールハーバーの影を見てしまったような瞬間でした。

 メディアの表面に見られる絶賛とは別に一般的な“アメリカ人”のレベルでは、ある意味でアメリカ人が“悪役”に感じられるこの作品が反発も招いている事は用意に想像できます。しかしこうした反響を喚起している点もこの作品の力であり、反発を生んだ老人と同年代であるイーストウッド監督の思考の柔軟さとチャレンジ精神には頭の下がる思いです。

 アカデミー賞作品賞に関しては、「ディパーテッド」、「バベル」の方が優勢と伝えられていますが、昨年の大番狂わせ「クラッシュ」の受賞(皆「ブロークバック・マウンテン」だと思っていた)を考えれば、今年はまだどの作品にも可能性は残されています。外国語、字幕、スター無しなどのハンデを乗り越え是非大逆転劇を起こし、そして一人でも多くのアメリカ人に見てもらいたい映画です。

★「遊戯王」「ポケットモンスター」等のアニメ映画がこれ以上の記録を残していますが、勿論これは吹き替え。中国語作品「グリーン・ディスティニー」が$100M以上という歴史的な記録を残していますが、これは“アクション映画”として認知された結果。

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