お見事。優れた犯罪アクション映画であり、現時点で本年度の最高の作品。アメリカでの批評を読むとスコセッシ作品としては“「グッドフェローズ」以来の優れた作品”という言い方が出ていますが、個人的には「グッドフェローズ」よりも上。「ギャングス・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」でアカデミー賞にもう一歩だったスコセッシ・ディカプリオコンビに悲願の栄冠をもたらすかも知れません★。
原作にあたる香港映画「インファナル・アフェア」の舞台である香港闇社会を、アイリッシュ・マフィアの跋扈するサウス・ボストンに移し変え★★、警官に潜入した犯罪組織の男と犯罪組織に潜入した警官の二人の男。常に死と背中合わせの緊張感の中で、生き残る唯一の方法は敵対する組織内“潜入者”を見つけ出し抹殺すること。お互いに顔も知らない二人が、自分の影に怯えつつ、生死をかけて激突します。
最近のリメークはやりのアメリカ映画をお嘆きの方も多いと思いますが、逆にリメークの強みもあります。それはきちんとした設計図(脚本)が既に出来ている為、その上に安心して力のあるスタッフ&役者達を乗せて存分に個性を引き出すことに集中出来ること。
演技では、繊細で脆いレオナルド・ディカプリオVS自信に満ちたマット・ディーモンの若手の駆け引きも素晴らしいのですが、やはり今回はジャック・ニコルソン。威厳と愛嬌を持ちながら、ちょっと気に入らなければ即相手の頭を打ち抜くようなぴりぴりとした狂気を撒き散らして、二人の運命を握る組織のボス・フランク・コステロを演じています。スコセッシと言えば、デニーロとのコンビが名高いのですが、今までニコルソンと組んだ事が無かったのが不思議。警察側幹部マーティン・シーン、マイク・ウォールバーグ、そしてアレック・ボールドウィンの3人も素晴らしいのですが、一人で対抗してしまうその存在感は圧巻です(犯罪組織幹部レイ・ウィンストンにもご注目を)。そしてこの男臭い世界の中で、注目は対決する二人の男から愛される運命の女性マドリンを演じるヴェラ・ファーミガ。精神科医という知的な役柄を演じながら、二人の男を惹きつけて行く色気は只者ではありません。これまでは独立系の映画で活躍してきた人ですが、今後化ける可能性あり。
スタッフに関しては、撮影(マイケル・ボールドハウス)も編集(名コンビ・セルマ・シューンメイカー)も巧みですが、個人的に特筆したいのは音楽。ハワード・ショアの音楽+相変わらずのスコセッシ選曲の上手さ。“戦争、レイプ、殺人。嵐が吹き荒れている。もし隠れる場所を見つける事が出来なければ、俺は吹き消されてしまう。誰か俺に隠れる場所をくれ”と歌うザ・ローリング・ストーンズの名曲“ギミーシェルター”、そして“私は、快適な麻痺に落ちてゆく”と歌うピンク・フロイド“コンフォタブリー・ナム”(映画ではアイランド系・バン・モリソンのバージョン)を、そして地元ボストンのバンド・ドロップキック・マーフィのアイリッシュ的でかつヘビーな“I'm Shipping Up To Boston”の予告編で使われている3曲が、分散した形で効果的に使われています。
こうした役者&スタッフを存分に操って、スコッセッシが本領を発揮したずしんとヘヴィなドラマ&アクション。1年半前のアカデミー賞の復讐を果たすときはやってきました。日本公開は来年1月★★★との事ですが是非お楽しみに(注:かなり血生臭いので、ご注意を)。
★「ミリオンダラー・ベイビー」で「アビエイター」を逆転、墜落させた最強のライバル・イーストウッドの「父親たちの星条旗」が今週末に登場しますが。スコッセッシVSイーストウッドの重量級再戦も見もの。
★★その雰囲気はライバル・イーストウッドの「ミスティック・リバー」にそっくり。あの映画も同じ場所で育った三人の男が、犯罪者、犯罪犠牲者、そして警官になる映画でした。ボストンはアイルランド系住民がアメリカで最も多く、U2のコンサートが最も盛り上がる場所。
★★★ 日本公式サイト
過去記事:ザ・ディパーティッド(インターナルインファナル・アフェア)/ The Departed プレビュー別ポスターあり
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