2013年1月14日 (月)

個人的なアカデミー賞一押し「Zero Dark Thirty/ゼロ・ダーク・サーティ」

Zero_dark_thirty_ver4 個人的には最もアカデミー賞の作品賞を取って欲しい映画。「ハートロッカー」で元夫ジェームス・キャメロンの「アバター」を打ち破り、アカデミー賞作品賞、監督賞に輝いたキャスリン・ビグロウ監督の新作「Zero Dark Thirty/ゼロ・ダーク・サーティ」は、前作が映画を見た者をイラク戦争の爆弾処理の現場へ送り込んだように、この映画ではアルカイダの首領・ウサマ・ビン・ラディン追跡の渦中へ見るものを叩き込みます。

 素晴らしいのはこの映画が単なるウサマ・ビン・ラディン殺害の内幕映画のような“題材によりかかったキワモノ”ではなく、追跡サスペンス映画としても一級品な点。「ツリー・オブ・ライフ」「ヘルプ」で昨年のアカデミー賞を騒がせたジェシカ・チャスティンが堂々の主役ぶりで執念に燃えるCIAの情報分析官を演じ、アカデミー賞主演女優賞のフロントランナーへ躍り出ています。

 元々失敗に終わったビン・ラディン逮捕作戦を描く予定で準備を進めていたら米国海軍特殊部隊が本当にビン・ラディンの殺害に成功してしまった為、内容が大幅に変更になったこの映画。余りにディープに秘密だったはずの追跡・殺害作戦の内容を詳細に描いている為、また拷問が本当にあったかどうかで政治的な議論に巻き込まれています。

 こうした議論があったせいかどうか、アカデミー賞の前哨戦では有利だったにも関わらず、作品賞にはノミネートされたものの監督賞にノミネートされず。作品としては「ハートロッカー」に劣らず、それ以上の評価を得ているこの作品でキャスリン・ビグロウ監督を落とすとは、相変わらずアカデミー協会も保守的です(まあ今年のアカデミー賞は確かに例年以上に水準が高いのも事実ですが)。日本では2月15日公開。

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2012年10月20日 (土)

ARGO/アルゴ

Argo 今年公開され私が見た映画(*)の中で現時点でのNo1。理由は後半の脱出劇に代表されるようにシンプルにサスペンス映画として優れている点に加え、「イランアメリカ大使館人質事件」こそが現在に至るアメリカとイスラム社会の対立の大きな分岐点だったことを見据えている点です。個人的には私が「アメリカの夜」や「ブギー・ナイト」、「エド・ウッド」のような映画製作の裏側の映画に弱い点もありますが(笑)。

 囲まれて苛立ちながらもワインを楽しみ「Led Zeppelin IV」のLP(!当然ですが、CD以前の時代です)をかける人質達、享楽&退廃的な生活の明け暮れるハリウッド人と現実的なイラン民衆との“格差”は今も変わっていない事を痛感させられます。

 監督・主演のベン・アフレックはそこに批判的な目を向けている訳ではなくて、そうした要素をドキュメンタリータッチで取り込みながら、そこに隠し味としてハリウッド映画人の“活動屋魂”、歴史の影で職責を果たそうとするCIA職員のプロ意識の高さを盛り込んで“娯楽映画”として結晶させています。あくまでも“実話を元にした”フィクションである事をお忘れなきよう(日本の宣伝は“実話”を強調しすぎ?)。

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2012年10月 2日 (火)

見てきました!「SKYFALL/007スカイフォール」

【見てきました!/11月17日】
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 製作会社MGMの経済的な問題により一時は絶望視されていた007シリーズ23作目が復活!面白いのはそんなインサイド・ストーリーを反映させてか劇中で描かれるのもジェームス・ボンドの死と再生。「アメリカン・ビューティ」のサム・メンデスを監督として起用して描く重厚な人間ドラマ+猛アクションを組合わせた21世紀型ジェームズ・ボンド映画です。

 そしてその全体を貫くシリアスさを生み出しているのが、ボンドの上司M(ジュディ・デンチ)とサイバー・テロリスト・シルバ(ハビエル・バルデム、「ノーカントリー」のおかっぱ殺し屋!)。シルバは前半は見えない”影”として、後半はハニバル・レクターか、ジョーカーかという存在感で映画全体を引き締めていますが、しかしなんと言ってもこの映画の裏主役はM。どんなに優秀な部下でも時には”捨て駒”として使わねばならない組織の長としての非情さと孤独を鮮やかに演じています。

 面白いのはボンドガール(!映画にまったく似合わない表現)の二人・ベレニス・マーロウ&ナオミ・ハリスが過去の伝統である”悪役の情婦タイプ(ボンドに陥落される)”と”ボンドの相棒タイプ(最後まで触らせない)”にくっきりと別れている点。この対比がちょっとした映画のアクセントになっています。

 他にもレイフ・ファインズ、アルバート・フィニー(この役はあの人に演じて欲しかった!)といった脇役もそれぞれ個性を発揮していますが、こんな曲者に囲まれた中で堂々と主役を張るジェームス・ボンド=ダニエル・クレイグの成熟ぶり。Mとの上司・部下を超えた絆の強さ(シルバとの対比になっている)、そして自分自身の過去との対峙。あと2作は彼が主演でシリーズ継続だそうですが、早くも24作目が楽しみです。

【11月11日】007史上新記録で「スカイフォール」発進!

【10/27追加】


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2009年6月 3日 (水)

天使と悪魔/ANGELS & DEMONS

Angels_and_demons_ver2 ダン・ブラウン原作、ロン・ハワードが監督しトム・ハンクスがハーバード大教授ロバート・ラングドンを演じるという「ダ・ヴィンチ・コード」の第二弾(こちらの方が劇中年代も書かれたのも「ダ・ヴィンチ・コード」より先ですが)。

 法王の死去に伴う後継者選定儀式(コンクラーベ)が行われる中、誘拐された有力時期法王候補者達と盗まれた“反物質”を利用した恐るべきテロ予告。ちらつく秘密結社「イルミナティ」の影。仇敵ヴァチカンから事件解決に召還されたラングドン教授は誘拐された四人の候補者とヴァチカン自体を救えるのか?

 原作を可能な限り再現しようとして自爆した(笑・そんなひどい出来ではなかったのですが)「ダ・ヴィンチ・コード」に比べてストーリーを“追いかけっこ”に絞り込んだ脚本の勝利ではるかにこちらの方がエンタテイメント。ジャックバウアーかジェイソン・ボーンかという勢いで中年大学教授が美しいヴァチカンを駆け回り、上映時間が過ぎ去ります。

 しかし刈り込んでしまった分だけ歴史ロマンの深みと天使と悪魔、宗教と科学、物質と反物質、カソリック教会とイルミナティに代表される相対するものとその調和といった味付け*もきれいさっぱりなくなってしまった感あり。よって説明不足でそりゃないだろの突っ込み所多数。まあ立派なサマーシーズン娯楽作品に仕上がっているので、それはないものねだりなのかも知れませんが。

*この対立の妙を見るならば同じロンハワードの「フロスト/ニクソン」を是非。

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2009年4月26日 (日)

アメリカの闇「消されたヘッドライン」

 日本ではあまり良く知られていませんが、実はアメリカの首都・ワシントンDCはけっこう危ない街。巨大な公園のようなこの街は人気のないエリアも多くスラム街も存在します。ひと気のない街で夜中に殺されても単なる強盗で片付けられてしまうでしょう。またニューヨークとは違ったストレスが多いこの街で誰かが線路に飛び込んでも、また突き落とされたとしても単にアンラッキーと片付けられてしまいかねません。TVで3分、もしくは新聞の片隅の小さな記事となってそして3日もたてば忘れ去られてしまう、悲しいけれどそれが現実です。しかもその単純に見える事件の背後に巨大な闇が動いているのだとしたら?

 警察は忙しすぎて機能せず、ニューヨークのようにスパイダーマンやデアデビルといったヒーロー達が助けてくれない現状の中で誰が助けてくれるのか?他のメディアに押され利益が上がらずぼろぼろになって巨大なメディアグループ傘下に堕ちているアメリカの新聞社に頼る事は出来るのでしょうか。
 
確かにワシントンDCの新聞社「ワシントングローブ社」**のカル・マカフレイの様な掟破り、型破りな古豪型の敏腕記者も存在しますがこのタイプは恐竜と同じで今や絶滅寸前。同社でブログを駆使して活躍するデラ・フレイ記者は優秀ですがまだまだひよっこ。だとすれば頼りになるのは結局自分自身。一人一人がインターネットに代表されるメディアを駆使して自ら市民ジャーナリストとなってこの闇と戦って行くしかないのでしょう。

以下は続きに

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2009年3月28日 (土)

歯ごたえ満点の2時間43分「ウォッチメン」

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 ヴェトナム戦争でアメリカが勝ち、ニクソン大統領が3選を果たしているパラレルワールドの1985年。ソ連のアフガニスタン侵攻で核戦争の危機が現実化しつつある中、ニューヨークで一人の男が殺される。男の名前はエドワード・ブレイク、またの名を“コメディアン”。ウォッチメンと呼ばれるヒーローグループの一人であった。彼の死の背後には何があるのか、そして何が動き出したのか。これは「ヒーロー狩り」の一環ではと考えたトレンチコートに帽子、そして顔に変化する模様が浮かび上がるコバックス、又の名をロールシャッハはウォッチメンのメンバー、隠遁中のナイトオウルII、政府機関で働くドクター・マンハッタン(最も神に近い男?)と彼と暮らす女性シルク・スペクターII、引退して億万長者となったオジマンディアスを訪ね真相を追います。

昨年末の新聞記事(朝日)で2008年の映画界の回顧として「ハリウッド映画は安易なコミックの映画化や、続編、リメークの乱発で衰退している」との論調がありました。続編連発、リメークに関してはある程度理解できることもないのですが、コミックの映画化に関しては大いに反論あり。論者は多分昨年の「ダークナイト」「アイアンマン」は見ず、「ウォッチメン」もお子様ランチだと思って手をつけていないのでしょうね(きっと「ドラゴンボール・エヴォリューション」だけ見るでは?)。この「ウォッチメン」を昨今のアメコミ原作映画の進化は恐るべきものがあります。なんともったいない。

 「ウォッチメン」については、原作未読でその存在だけは知っていましたが、ヒーローが介在してちょっとだけ変って(狂って?)しまった世界の中で展開するそのハードボイルドな世界は監督ザックスナイダーの前作「300」よりも、どちらかというと「シン・シティ」に近い感覚。とにかく映像の中に注ぎ込まれた政治、哲学、道徳、心理学、サブカルチャー等の情報量が半端ではなく、また映画全体が巨大なロールシャッハ・テストになっているという罠。ちょっと気を抜くと振り落とされます。このあたりが熱狂的なマニアを生み出す原動力なのでしょう。歯ごたえ満点の2時間43分です。

・ロールシャッハ・テスト:インクの染みを「どのように見えるか」によって分類する人格検査。主に精神障害の診断に用いられる。
・監督によれば「映像で原作世界の再現にお金を使い切っちゃって無名の役者しか使えなかったそうですが(笑)、やはりジャッキー・アール・ヘイリーがさすが。面白いのは彼がアカデミー賞にノミネートされた「リトルチルドレン」でケイト・ウィンズレットと大胆な(浮気)ベットシーンをしていたパトリック・ウィルソンがここでも大胆に(笑)。「リトルチルドレン」でそのウィルソンの妻を演じていたジェニファー・コネリーと「Walking the Dead(ゾンビ映画ではありません)」で大胆なラブシーンをしていたビリー・クダラップが同じチーム。仲間割れしそう?

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2009年1月25日 (日)

お腹一杯、「007/慰めの報酬」

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 ソニーがスポンサーになって(!)、新装開店した”007”シリーズの第二弾は前作を凌ぐアクションのてんこ盛り。

 アクション・シーンでは暗めの画面の中細かなカットを積み重ね、闘っている人(車)にカメラが密着して動きまくりリアリティを出すやり方(暗くて細部が見えない、カメラ酔いしかねない)で、「ボーン」シリーズの影響下にある*のは明らかですが、本家の意地を見せて21世紀型アクションの最高峰を見せてくれます。個人的には、復讐のオペラ「トスカ」をバックにしたアクション・シークエンスが「ゴッドファーザー」を思わせお気に入り。

 同時に「触れ行くものは全て消え行く定め」の人間ボンドの哀愁と成長のドラマは盛り込まれているのでお腹一杯。短いセリフに重たい背景を忍び込ませる腕は、前作に続いくポール・ハギス他の脚本陣の腕の見せ所。“野獣系ボンド”ダニエル・クレイグは映画のトーンにマッチして好調。悪役マチュー・アマルリックが小物っぽく見えるところが、逆に背後の組織の”大きさ”を感じさせてくれて面白いバランス。ボンド・ガール・オルガ キュレリンコは露出不足(?)かも知れませんが、ご不満の方は「ヒットマン」をレンタルしてきましょう。

 ラストが前作「カジノロワイヤル」ほどの「!」感がない、「カジノロワイヤル」を見ていないとなにがなんだかわからない**、ボンドの迎え(拘束)に若い女性を出すようなまねをMI-6がするかあ、と弱点はあるのですが、徐々に姿を現し出した“巨大な敵”の黒い影とともにまた次回作が楽しみ。

*編集のリチャード・ピアソン、第二班監督ダン・ブラッドリー、スタント・コーディネイターのゲイリー・パウエルは「ボーン」シリーズに関っています。
**車のトランクのおっさん、ひげの黒人おっさん、イタリアの隠居おじさん、そもそもヴェスパーって誰?がわからないと混乱必死。また”火の中で抱きしめる”は前作の”シャワーの中で抱きしめる”と呼応しているので前作の復習が必須。

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2008年12月 2日 (火)

ケイト・ウィンスレット新作「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」&「愛をよむひと(The Reader)」

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 メリル・ストリープが現役の演技派の女王(アカデミー賞ノミネート14回、受賞2回)だとすると、31歳にして既に5回のノミネートを誇るケイト・ウィンスレット(ウィンズレットが正しいと思うのですが)はプリンセス(?)。その彼女の12月米国公開の新作で既にダブルノミネートの可能性がささやかれているのが、実生活の旦那サム・メンデス監督、「タイタニック」の運命の人レオナルド・ディカプリオを共演に迎えての「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」とベルンハルト・シュリンクのベストセラー「朗読者」を、「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化、レイフ・ファインズが共演する「愛をよむひと(The Reader)」の二本です。作品情報&予告編続きにあります。

 「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」はディカプリオ・ウィンスレットの共演でまるで「タイタニック」の続編ノリですが、予告編を見ると「アメリカン・ビューティー(サム・メンデス監督のデビュー作)や「リトル・チルドレン」を思わせるヘビィな家族ドラマの模様。「愛をよむひと(The Reader)」ははやりの(?「ワルキューレ」等この冬、映画館にはナチスが一杯)第二次大戦下の欧州でのこちらもヘビィなドラマ。尚2008年3月に他界したアンソニーミンゲラの最後に関与した(製作)作品です。

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2008年1月16日 (水)

ジョージ・A・ロメロ新作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」

Diary_of_the_dead240 噂のロメロの新作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」はアメリカで2月15日公開。

 元々、インデペンデント系映像作家である彼は、一時期ハリウッドで”ゾンビ外”ホラー等も撮ったりしていたのですが、老齢にさしかかりもう”撮りたいものだけとるんじゃ”といわんばかりにここにきてゾンビ物に復帰。それでも復帰作「ランド・オブ・ザ・デッド」は彼にしては結構オールスター作品でしたが、今回は更に”インデペンデント”のルーツに帰り、無名の出演者&製作スタッフと組んで低予算作品で”ゾンビが人類を襲った最初の日”に焦点を当てたインデペンデントな匂いの漂う作品。

 ただ大きな問題は18日から公開されヒットが予想される「クローバーフィールド HAKAISHA」が全く同様なアイデアの作品であること。中1ヶ月で似たようなアイデアの作品とぶつからなくてはならないのはちょっと危ないかも(ライバルは俊英・JJエイブラムスだし、でもいずれにしても「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」だし)。

Diary of the Dead - Exclusive Trailer

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2008年1月 5日 (土)

M・ナイト・シャマラン最新作「ハプニング」The Happening

2008年10月10日
感想はこちらにまとめました:2008年夏の映画総括その1:アクション映画編
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Happening480 我々は既にそれを感じ(センスド)、その兆し(サイン)を見た・・そしてそれは、今、起きているっ!(ハプニング)。

「シックス・センス」「アンブレイカブル」で次のスピルバーグと呼ばれていた(過去形)俊英・M・ナイト・シャマランの最新作。マーク・ウォールバーグ、ズーイ・ディシャネル、ジョン・レグイザモというキャストもなかなか興味深く、どうしても期待してしまうのですが。6月13日の金曜日公開。

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